現代の多くのオフィスや会議室ではホワイトボードが主流ですが、学校の教室では今も黒板とチョークが広く使われています。チョークは私たちにとって馴染み深いアイテムですが、その原料について詳しく知る機会は少ないかもしれません。
この記事では、チョークがどのような素材から作られているのかを掘り下げていきます。
チョークの由来と進化
「chalk」という言葉は、元々は有孔虫の化石が積み重なってできた柔らかい白い石灰岩を指す言葉でした。19世紀のイギリスで、この石灰岩が白い線を描くのに適していることが発見され、書き物用のツールとしての利用が始まりました。
フランスでは石灰岩の粉末を焼いて水で練り、棒状に成形する製法が開発されました。これが現代のチョークの原型となります。
日本では1873年に初めてチョークが導入され、当初は硫酸カルシウムを主原料とする石膏チョークが使用されていました。杉本富一郎氏によって大阪で初めて国産チョークの生産が行われ、それが始まりとされます。
1926年には石灰岩を基にした炭酸カルシウムチョークの生産が始まり、その後、様々な色や蛍光色のチョークも開発されました。日本では長い間、チョークを「白墨」と呼んで親しまれています。
チョークの主要な成分とその特性
チョークには主に二つのタイプがあり、それぞれ硫酸カルシウム製と炭酸カルシウム製として知られています。日本の産業規格(JIS S 6009)では、硫酸カルシウム製チョークは石膏を90%以上含むこと、炭酸カルシウム製チョークは炭酸カルシウムを60%以上含むことが規定されています。現在、硫酸カルシウム製チョークもまだ使用されていますが、炭酸カルシウム製の生産量が増加しています。
硫酸カルシウムの特性と利用
硫酸カルシウム製チョークは、焼き石膏と水を混ぜ合わせて均一な泥状にした後、型に流し込み硬化させ乾燥させることで作られます。このタイプのチョークは以下の特性を持っています。
- 比重が軽く、使った際の飛び散りが多い
- 粒子が大きく柔らかで、折れやすく耐久性が低い
- 太い文字の筆記に適している
炭酸カルシウムの特性と進化
炭酸カルシウム製チョークは、炭酸カルシウムに適量ののり剤と水を加え、押出機で棒状に成形し、規定の長さに切断後に乾燥させる方法で製造されます。このタイプのチョークは以下の特性を持っています。
- 比重が重く、消しゴムで消した時の粉の飛散が少ない
- 粒子が細かく硬いため、折れにくく耐久性が高い
- 細かい文字の筆記に適している
元々は石灰岩から生産されていた炭酸カルシウム製チョークですが、環境保護とリサイクルの観点から、最近ではホタテ貝の貝殻や鶏卵の殻を原料として使用するようになっています。
石灰岩の重要性
石灰岩はチョーク製造において長らく基本的な原料とされており、日本国内では比較的豊富な天然資源です。この豊富な石灰岩の存在が、国内でのチョーク生産を支えています。
ホタテ貝殻の活用
ホタテ貝殻は、むき身の出荷に伴い大量に発生し、従来はカキ養殖や土壌改良材、飼料として再利用されていましたが、まだ多くが未利用のまま廃棄されています。ホタテ貝殻の主成分である炭酸カルシウムは白さが際立っており、これを利用した新たな用途が模索されています。
2005年からは、日本理化学工業(株)との共同開発により、ホタテ貝殻を使用した「ダストレスチョーク」が市場に登場しています。
卵の殻の再利用
キユーピーが製造するマヨネーズ用の卵から年間約2万8000トンの卵殻が発生しており、これらは炭酸カルシウムを豊富に含むため、チョークの素材として再利用されています。
2004年からはグリーンテクノ21がこれを受け取り、洗浄・殺菌後にチョークの生産に利用。商品名「コッコチョーク」として販売されており、卵殻から作られるチョークも土壌改良材としての活用が可能です。
チョークのカラーバリエーション
チョークは白以外にも多彩な色が提供されており、赤、黄、青、緑、茶、紫の計6色が存在します。これらは顔料を用いて着色されており、その顔料は水や油に溶けにくく、色あせしにくい特性を持っています。
チョークの成分と種類:まとめ
黒板用チョークには硫酸カルシウム製と炭酸カルシウム製の二つの主要なタイプがあります。
硫酸カルシウム製は石膏を主材料としており、炭酸カルシウム製は石灰岩やホタテ貝殻、卵殻を原料としています。また、チョークの色付けには耐久性の高い顔料が使用されています。