ドライアイスは保冷剤として、また舞台効果で白煙を生み出すためにも広く利用されています。これは、その取り扱いが比較的簡単であるためです。しかし、適切でない使用方法には、様々なリスクが伴います。
まずはドライアイスとは何かを理解することから始めましょう。
ドライアイスの基本
空気中にも存在する二酸化炭素は通常、気体状態です。しかし、極めて低い温度、具体的にはマイナス78.5℃で凝固し、ドライアイスと呼ばれる固体に変わります。家庭の冷蔵庫ではこの温度に達することができないため、ドライアイスの生成は専用の設備を要します。
ドライアイスは石油精製時に副産物として出る二酸化炭素を用いて製造されます。このガスを10~30気圧で圧縮し、冷却して液化させた後、急速に圧力を1気圧に戻すことで固体化します。この変化は、気化熱が奪われることで起こり、その結果として粉末状の固体が得られます。
ドライアイスの安全性とリスク
二酸化炭素中毒と酸欠のリスク
ドライアイスは固体の二酸化炭素で、環境圧下では液体を経ずに直接気体に変化し、その体積は約750倍に膨張します。無色無臭のこの気体は重く、空気中で下層に溜まる性質があります。密閉空間での使用は特に危険で、二酸化炭素の濃度が高まると酸欠や中毒のリスクが生じます。
例えば、350gのドライアイスが2000リットルの部屋で急速に昇華すると、室内の二酸化炭素濃度は約10%に達し、これは意識障害を引き起こす可能性がある濃度です。実際には、ドライアイスの使用による作業者の死亡事例も報告されています。
安全対策の重要性
ドライアイスは通常、大量に気化するとき危険性が高まるため、換気の悪い場所での使用や保管は避けるべきです。日常生活でドライアイスが送られてくることが多い今日、これを安全に扱うためには、十分な換気を確保することが必須です。
凍傷の危険
ドライアイスは非常に低い温度(-78.5℃)であるため、直接肌に触れると凍傷を引き起こすことがあります。短時間の接触でも皮膚が白くなり感覚が失われ、長時間の接触では重度の損傷や壊死を招くことがあります。
事例には、宅配の冷凍食品から取り出した際や、スーパーマーケットでの取り扱い中に発生した凍傷があります。安全な取り扱いには保護手袋の着用が推奨されます。
取り扱い時の安全対策
宅配された冷凍食品に使用されるドライアイスは、触れる前に内容物を確認し、ドライアイスが含まれている場合は厚手の手袋を使用して取り扱いましょう。特に子供がドライアイスに触れる場合は、直接触れないように監督することが重要です。
容器の爆発リスク
ドライアイスが気体に変わる際には体積が著しく増大し、密閉容器内での使用は危険です。ペットボトルやビンなどに入れて密閉すると、内圧が急上昇し爆発のリスクがあります。
実際にペットボトルにドライアイスを入れて密閉した結果、爆発事故が発生しています。
密閉容器への注意
密閉容器にドライアイスを入れることは避け、安全な方法で取り扱いましょう。
ドライアイスの安全な処分方法
使用後のドライアイスは、開放的で風通しの良い場所で自然に昇華させることで安全に処分可能です。
ドライアイスの安全な取り扱い:まとめ
ドライアイスは日常生活で頻繁に遭遇するものですが、安全に取り扱うためには適切な知識と注意が必要です。
事故を避けるためにも、ドライアイスの特性を理解し、推奨される安全対策を常に実践しましょう。