私たちの食卓によく登場するうるち米。それとは対照的に、もち米は赤飯やおこわ、お正月のお雑煮用のお餅、ちまき、あられといった多様な料理で楽しむことができます。
この記事では、うるち米ともち米の特徴と違いを掘り下げて解説します。
うるち米ともち米、その本質的な違い
うるち米ともち米の語源と意味
うるち米の「うるち」と、もち米の「もち」、これらの語源にはどのような意味が込められているのでしょうか?「うるち」とは粳と書き、アミロースを含む稲や大麦の品種を指します。一方で「もち」とは糯と書き、アミロースをほとんど含まない品種を指します。
粘りの秘密
うるち米ともち米の明確な差異はその粘り気にあります。この粘り気の違いは、米のデンプンの構造の違いに起因します。米の主要成分であるデンプンは、米の胚乳部分に含まれ、ブドウ糖が結合して形成されます。
このデンプンは、結合の仕方によりアミロースとアミロペクチンに分けられます。もち米のデンプンは主にアミロペクチンで構成され、アミロースはほとんど含まれていません。
一方、うるち米ではアミロースが約20%、アミロペクチンが80%含まれています。アミロペクチンの枝分かれした構造が粘り気の源となっており、加熱時に水と反応してその粘りが顕著になります。
アミロース含有量の異なる米類の特性
アミロース含有量が中間程度の「低アミロース米」も市場に登場しています。この種の米はデンプンの約10%がアミロースで、冷めても味が落ちにくく、粘りが強いことが特徴です。
米の外観の違い
一般的なうるち米は透明感がありますが、もち米は透過性が低く、光を反射して白く見えます。これは、もち米が乾燥するとデンプン粒子の表面に結晶状の微粒子が形成され、さらに乾燥が進むとその間に気泡が入り込み光を散乱させるためです。その結果、うるち米が半透明に対して、もち米は不透明な白色に見えるのです。
吸水性の差
もち米はアミロペクチンが主成分で、水に触れても溶けにくいものの吸水速度が早く、簡単に膨れて浸水します。
これにより、カビが生えやすい性質を持っています。実際にもち米を水に浸すと、約2時間で水を約40%吸収します。もち米を炊く際は、硬くならないように通常より多めの水(基準の1.2倍)が必要です。
カロリーと栄養成分
うるち米ともち米は主に炭水化物で構成されており、両者の間にはタンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養成分に大きな差はありません。100gあたりの炭水化物は約77g、タンパク質は約6gで、その他の栄養成分もほぼ同量です。カロリーに関しても、両者はほぼ同じで、100gあたり約360kcalです。
GI値の違いとその影響
栄養成分やカロリーが似ているため、うるち米ともち米のGI値も同じだと思われがちですが、実際には異なります。
アミロースの含有量が高いうるち米は消化されにくいためGI値が低く、逆にもち米は消化されやすく血糖値の上昇が早いためGI値が高くなります。GI値は食品の摂取後に血糖値がどの程度速く上昇するかを示す指数で、低いほど血糖値の上昇が緩やかです。
うるち米ともち米の栽培の秘密
うるち米ともち米の栽培方法は基本的に同じですが、根本的な遺伝的差異があります。もち米はうるち米の一種で、アミロースをほとんど生成しない遺伝子の突然変異によって生まれた品種です。
遺伝的にうるち米が優性であるため、もち米の稲にうるち米の花粉が付着すると、生まれる稲穂はうるち米の特性を持ちます。
この遺伝子の違いにより、混植時には両種の特性が混ざり合い、理想的な食感が損なわれることがあります。したがって、農家はもち米とうるち米の田んぼを物理的に離したり、植える時期をずらしたりして交雑を防いでいます。
うるち米ともち米の違い:まとめ
もち米はうるち米の一変異型で、遺伝的にアミロースをほぼ生成しません。同じ条件下で栽培されるものの、品種が異なるため注意が必要です。
栄養面では、どちらも炭水化物を主成分としており、主要な栄養素やカロリーに大きな差はありませんが、デンプンの構成比により食感や消化速度、見た目の色が異なります。
うるち米はアミロースとアミロペクチンのバランスが約20%と80%で、もち米はほぼアミロペクチンで構成されています。これが両米の大きな食感差を生み出しています。