サウナの温度は90~100℃に達することがありますが、このような高温でも火傷することはないのが一般的です。
通常、90℃のお湯に触れると火傷のリスクがありますが、サウナの場合は異なります。この記事では、サウナが高温であるにも関わらず火傷しない理由について解説します。
サウナの種類と温度設定
サウナにはさまざまなタイプがあり、それぞれの温度設定も異なります。
ウェットサウナの特徴
ウェットサウナは湿度が特徴的なサウナタイプです。スチームサウナやミストサウナなどがこれに該当し、温度範囲は40~60℃で湿度は80~100%とされています。このタイプのサウナは、蒸気や霧を利用して室内を高湿度に保ち、穏やかな温度で発汗を促します。
ドライサウナの特性
ドライサウナは湿度が低く、通常のサウナと言えばこのタイプを指すことが多いです。温度設定は80~100℃と高く、湿度は約10%と乾燥しています。この高温低湿度の環境は、強力な発汗作用を促します。
なぜサウナは高温でも火傷しないのか?
ドライサウナの温度設定は100℃に達することがありますが、サウナ室内では下段で70℃、上段では約100℃になります。しかし、この高温であっても湿度が約10%と非常に低いため、火傷することはありません。では、どうして100℃のサウナで火傷しないのでしょうか?
熱伝導率の役割
サウナで火傷しない理由は、熱伝導率の違いにあります。熱伝導率とは、物質が熱を伝える能力を示す値で、1m厚の物質を通じて1℃の温度差があるとき、1秒間に1平方メートルを通過する熱量で定義されます。気体、液体、固体の中で、気体は最も熱伝導率が低く、熱が伝わりにくい性質を持っています。
例えば、水の熱伝導率は0.68[W/mK]、空気は0.032[W/mK]、水蒸気は0.024[W/mK]です。このため、40℃の水の中では温度計がすぐに40℃になるのに対し、同じ温度の空気の中では温度計が40℃になるまで時間がかかります。これが、水と空気の熱伝導率の違いによるものです。
このように、空気は熱を伝えにくいため、100℃のサウナ室内でも人体は短時間であれば火傷をしにくいのです。
熱容量の影響
サウナで火傷しない理由の一つに熱容量の違いがあります。物体にはそれぞれ異なる熱量が蓄えられており、物体の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量を熱容量と呼びます。水、空気、水蒸気の単位体積当たりの熱容量は以下の通りです。
以下は、水、空気、水蒸気の熱容量を表にまとめたものです。
物質 | 熱容量 (J/K・mL) |
水 | 4.2 |
空気 | 0.00092 |
水蒸気 | 0.00121 |
水の熱容量が空気や水蒸気に比べて格段に大きいため、熱湯に触れると大量の熱が伝わり火傷の原因となりますが、サウナのように熱が空気中に存在する場合、熱が体へ移動しにくく火傷に至らないのです。
汗と体温調節
サウナでの火傷回避のもう一つの要因は汗です。
100℃のサウナ室内にいても体の表面温度は100℃まで上がらず、体温より若干高い程度です。サウナ室内が乾燥しているため、体から出る汗が蒸発する際に気化熱を発生させ、これが皮膚の温度を下げる作用があります。これは、夏の暑い日に庭に水を撒いて涼しさを感じるのと同じ原理に基づいています。
サウナの効果的な利用方法
サウナを利用する際は、入室前に水を一杯飲んで十分に水分を補給し、体を丁寧に洗ってから乾燥させ、汗をよくかけるようにします。
通常、サウナでは90~100℃の温度で8~10分間滞在し、その後冷たいシャワーや水風呂で体を冷やします。このサイクルを繰り返すことで、効果的にデトックスできます。サウナ、水風呂、休憩の一連の流れを2~3セット行うことが推奨されています。また、サウナに入る際は、金属製のアクセサリーを外しておくことが大切です。アクセサリーが高温になり、火傷の原因になるからです。
サウナはなぜ高温でも火傷しないのか?まとめ
サウナの中では100℃近い高温にも関わらず、皮膚が火傷しない主な理由は、空気や水蒸気の熱伝導率と熱容量が水に比べて非常に小さいためです。
風呂の湯と体の接触時には大量の熱が瞬時に移動しますが、サウナ内の空気や水蒸気ではこのような熱の大量移動は起こりにくいのです。
また、サウナでの発汗が体温の上昇を抑える効果もあります。汗が蒸発する際に体表から熱を奪うことで、皮膚表面の温度が急激に上昇することを防ぎます。これにより、高温の環境下でも火傷するリスクを最小限に抑えることが可能です。